「その火を飛び越して来い!」
若者の腕は少女の体を抱き 二人はお互いの裸の鼓動をきいた・・
日本公開:1975年4月26日
配給:東宝
ジャンル:文芸/ドラマ
原作:三島由紀夫
監督:西河克己
出演: 山口百恵、三浦友和、初井言栄 、亀田秀紀、中村竹弥、有島一郎
【 解 説 】
三島由紀夫の同名小説は、これまでに5回映画化されているが、これは4回目の映画化作品。
山口百恵&三浦友和、コンビ第2作。ホリプロ創立15周年記念作品。
潮の香り、海鳴り、きらめく太陽・・・美しいの大自然の伊勢湾に浮かぶ歌島を舞台にくり広げられる、島一番の金持ちの娘、初江と漁師の新治。りりしくもさわやかな若き男女の、身分を越えた愛。
肉体と精神のバランスを重んじる三島のたくましき理想主義を、山口百恵と三浦友和は、巧まずして体現している。
嵐の小屋のなか、ずぶ濡れになった2人が互いに衣服をはぎとって裸になり、抱きあうラブシーンも、すこぶる健康的、かつかわいらしく表現されているのがほほえましい。
叙情を重んじる映像美のなかに、思春期のときめきや青春の躍動感などの要素を盛りこんだ西河克己監督の達者な演出も、もっと評価されていいのではないか!
【 内 容 】
伊勢湾の湾口にある歌島は人口千四百、その殆んどが漁師と海女である。 新治はまだ18歳。 彼は一昨年、中学を出るとすぐ十吉の船に乗り込み、母と弟の生計を助けていた。彼がその見知らぬ少女と会ったのは夕暮の浜でだった。 額は汗ばみ、頬は燃え、寒い西風に髪をなびかせながら、少女は暮れていく西の海の空を見つめていた。 だが、新治はその顔に見覚えがなかった。
翌日、新治は十吉から、昨日の少女は、村の金持、宮田照吉の娘で初江といい、照吉は一人息子に死なれたために他所に預けておいた初江を呼び戻し、島で婿を取らせるらしい、という事を知らされた。 四、五日後、強風のために休漁した新治は、山の観的哨跡で道に迷っている初江に会った。 若い二人はすぐに意気投合して、噂好きの村人から避けるために、この観的哨跡を二人の秘密の場所とした。 給料が出た日、新治は初江の入婿に安夫がなる、という噂を聞いた。 暗い心を抱いて家へ帰った彼は、給料袋を落とした事に気づき、浜へ探しに行くと、初江がその給料袋を拾って持っていた。 新治は安夫との噂の事を初江に問い正すが、初江は笑うばかり。新治は、自分の唇をそっと初江の唇に触れさせた。
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