こんなハードボイルドがあるのか
「青春は屍をこえて」
公開:1980年10月4日
原作:大藪春彦
ジャンル:アクション/サスペンス
監督:村川透
製作:角川春樹
配給:東映
出演者:松田優作,小林麻美,室田日出男,鹿賀丈史
【 解 説 】
ハードボイルド作家大藪春彦の同名小説を1959年の仲代達矢主演作につづき再映画化。遊戯シリーズのコンビ、村川透監督、松田優作主演。
配給は東映、製作は角川春樹事務所。主演を務めた松田優作の鬼気迫る演技が話題となり、映画化された同名作品の中では本作が最も著名な作品である。
ただし人物描写などに原作との差異が少なからず存在するため、原作とは同名異作のハードボイルド映画とする評価もある。
主演の松田優作は、クランクイン前に「役作りのために少し時間が欲しい」としてしばらくの間スタッフと音信を絶っている。
その間に松田は10kg以上減量(検量してみたところ62kgまで落ちていた)し、更に頬がこけて見える様にと上下4本の奥歯を抜いたという。
約1ヶ月後、撮影所に現れた松田の痩せ細った姿に監督の村川透が激怒し、松田と激しい口論を始めたという逸話も残されている。
また、役になりきる上では身長が高過ぎるという理由で「可能なら足を5cm程切断したい」と真剣に語っていたとも伝えられている。
なお撮影当時の松田の身長は185cm、物語における主人公の身長設定は「180cm前後」もしくは「180cm以上」とされており、数値だけを見ればさほど差があるわけではない。
上記の通り主人公・伊達邦彦のキャラクター像は原作とは大きく異なっている。そのため脚本を担当した丸山昇一は、伊達のキャラクター描写について大藪春彦から批判されたと後に語っている。これは大藪が伊達を野性的なタフガイとして位置付けていた(大藪は『野獣』シリーズ以外の作品にも伊達を登場させているが、その人物像は終始一貫している)のに対し、丸山は原作が書かれた時期とは時代の様相が大きく異なっていた事も鑑みて、当時の若者から感じ取った掴みどころがなく陰湿な不気味さを持った人物として伊達を描いた事に起因する。
本作の場面描写には抽象的な点も多く、特に結末は現在でも邦画における難解なラストシーンのひとつに数えられている。
解釈には「待ち伏せていた警察隊により狙撃され死亡した」「伊達の狂気が生み出した幻影」「突発的にフラッシュバックを起こし、錯乱した」など諸説あるが、公式に明示された例は無いため結論は得られていない。
【内 容 】
伊達邦彦は、通信社のカメラマンとして世界各国の戦場を渡り歩き、帰国して退社した今、翻訳の仕事をしている。普段は落ち着いた優雅な日々を送っているが、戦場で目覚めた野獣の血が潜在しており、また、巧みな射撃術、冷徹無比な頭脳の持ち主であった。ある日、大学の同窓会に出席した伊達は、その会場でウェイターをしていた真田に同じ野獣の血を感じ、仲間に入れ、銀行襲撃を企む。
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