加賀恭一郎シリーズ 東野圭吾

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加賀恭一郎
1986年の東野のデビュー第2作『卒業』で初登場、その時は国立T大学に通う大学生で、在学中に巻き込まれた連続殺人事件の探偵役だったが、1989年の『眠りの森』で「作者のちょっとしたイタズラ心」から、警視庁捜査一課の刑事として再登場する。また『学生街の殺人』で、加賀恭一郎がゲスト出演している。

東野にとって加賀は「自分がしっかりキャラクターを持っている人物」「自分がやったことのない実験作に挑む際に登場させることが多い、頼りになるキャラクター」であり、1990年代中盤から後半にかけては『悪意』や『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』『嘘をもうひとつだけ』といった本格ミステリ的趣向の話題作にも登場した。『悪意』以降、加賀は脇役といえる位置づけに回ることもあり、『どちらかが彼女を殺した』では本庁から所轄の刑事になっている。そして、2006年刊行の『赤い指』では、自らの家族と向き合いながら、どこにでもある家族の闇に迫る姿、2009年刊行の『新参者』では日本橋人形町を歩き回る姿が描かれた。『麒麟の翼』では親子の愛情について深く掘り下げられた。

作品一覧

卒業

詳細は「卒業―雪月花殺人ゲーム」を参照
単行本:1986年5月20日 講談社 ISBN 4062027283
文庫本:1989年5月15日 講談社文庫 ISBN 4061844407(解説:権田萬治)
加賀恭一郎の初出演作。このときは国立T大在学中でありながらも多彩な頭脳で事件を暴く。『卒業-雪月花殺人ゲーム』は2009年に新装版が刊行され、タイトルも『卒業』だけとなり、加賀恭一郎シリーズの文庫の中で唯一、新装された。

眠りの森


詳細は「眠りの森」を参照
単行本:1989年5月8日 講談社 ISBN 4061939769
文庫本:1992年4月15日 講談社文庫 ISBN 4061851306(解説:山前譲)
容疑者と同じバレエ団の女性に思いを寄せながら、バレエ界での正当防衛の真実に加賀が肉迫する。
どちらかが彼女を殺した
詳細は「どちらかが彼女を殺した」を参照
単行本:1996年6月6日 講談社ノベルス ISBN 406181687X
文庫本:1999年5月15日 講談社文庫ISBN 4062645750(解説:西上心太)
妹の復讐を誓う兄、それを止めようとする恭一郎。そして、容疑者は2人―男か女か。

悪意


詳細は「悪意 (小説)」を参照
単行本:1996年9月20日 双葉社 ISBN 4575232645
単行本:2000年1月5日 講談社 講談社ノベルス ISBN 4061821148
文庫本:2001年1月15日 講談社文庫 ISBN 4062730170(解説:桐野夏生)
小説全体が、野々口や加賀の手記、回想の形式で書かれており、「なぜ犯行に至ったのか」という、ホワイダニット(動機)に重点を置いて書かれている。

私が彼を殺した


詳細は「私が彼を殺した」を参照
単行本:1999年2月5日 講談社ノベルス ISBN 406182046X
文庫本:2002年3月15日 講談社文庫 ISBN 4062733854(解説:西上心太)
作家の穂高誠が詩人の神林美和子との挙式で毒殺された。容疑者は3人-美和子の兄か、穂高のマネージャーか、美和子の担当編集者か。『どちらかが彼女を殺した』同様、最後まで犯人が明かされない。難度も上がっている。

嘘をもうひとつだけ


(短編集)

詳細は「嘘をもうひとつだけ」を参照
単行本:2000年4月10日 講談社 ISBN 4062100487
文庫本:2003年2月15日 講談社文庫ISBN 4062736691
シリーズ初の短編集。全て「嘘」に関連した話になっていて、恭一郎以外の人物の目線で描かれている。

タイトル 初出 備考
嘘をもうひとつだけ 「IN★POCKET」1999年5月号
恭一郎が『眠りの森』を思わせる発言をする。

冷たい灼熱 「小説現代」1996年10月号
「多摩南署たたき上げ刑事・近松丙吉シリーズ」の第1作としてテレビドラマ化。

第二の希望 「小説現代」1997年6月号
狂った計算 「小説現代」1997年10月号
「多摩南署たたき上げ刑事・近松丙吉シリーズ」の第2作としてテレビドラマ化。

友の助言 「小説現代」1999年7月号
恭一郎の友人が登場。

赤い指


詳細は「赤い指」を参照
単行本:2006年7月25日 講談社 ISBN 4062135264
文庫本:2009年8月12日 講談社文庫 ISBN 9784062764445
少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか、加賀が挑む。

新参者


(連作集)

詳細は「新参者 (小説)」を参照
単行本:2009年9月18日 講談社 ISBN 4062157713
文庫本:2013年8月9日 講談社文庫 ISBN 9784062776288
マンションで絞殺された40代の独身女性。事件の真相を追い、日本橋人形町を加賀が歩く。九つの謎を解いたとき、初めて事件は幕を閉じる。

タイトル 初出 あらすじ
煎餅屋の娘 「小説現代」2004年8月号 おばあちゃんのところに来た保険会社の男
料亭の小僧 「小説現代」2005年6月号 料亭の主人に人形焼を買ってこいと命じられた小僧
瀬戸物屋の嫁 「小説現代」2005年10月号 仲の悪い二人の嫁姑。間に入っておろおろする息子
時計屋の犬 「小説現代」2008年1月号 犬の散歩中に殺された女性と会っていたという男性
洋菓子屋の店員 「小説現代」2008年8月号 いつも買いにきてにこにこしているのが殺された人
翻訳家の友 「小説現代」2009年2月号 自分がもう少し早く行けば殺されなかったのにと自責の念に駆られている友人
清掃屋の社長 「小説現代」2009年5月号 自分の秘書に若い女性を置いたことで誤解を受ける清掃屋の社長
民芸品屋の客 「小説現代」2009年6月号 孫にコマを見つけられた男
日本橋の刑事 「小説現代」2009年7月号 部下に振り回されながら事件を解決する刑事
麒麟の翼
詳細は「麒麟の翼」を参照
単行本:2011年3月3日 講談社 ISBN 4062168065
文庫本:2014年2月14日 講談社文庫 ISBN 978-4062777667
ある夜、巡査が声をかけたのは刺殺された男の死体だった。日本橋で起きたこの事件の真相に、加賀が立ち向かう。

祈りの幕が下りる時


詳細は「祈りの幕が下りる時」を参照
単行本:2013年9月13日 講談社 ISBN 4062185369
文庫本:2016年9月15日 講談社文庫 ISBN 978-4062934978
小菅のアパートで住人ではない40代女性の遺体が発見された。捜査線上に浮かぶのは被害者の親友の女性演出家。そして事件は加賀自身の亡き母に関する問題と結びつき…。

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