ドラマアカデミー賞 ’99
■第20回( )
最優秀作品賞
「ケイゾク」 TBS系 推理力抜群のエリート警部補・柴田(中谷美紀)と暗い過去をもつ腕利き刑事・真山(渡部篤郎)が迷宮入りした事件を扱う捜査2係で活躍する。1話完結の推理ドラマとして展開した前半に対し、後半は真山の過去を軸に話を展開。斬新な映像や軽妙な演出も効果的で、視聴者を最後まで飽きさせず引きつけた。
主演男優賞
江口洋介 「救命病棟24時」 フジ系 植物状態の妻をもちながらも医療に命を燃やすシリアスな役どころを、毅然としたふるまいと説得力ある口調で演じて地力を見せつけた。主演男優賞は今回が初受賞となった。
主演女優賞
中谷美紀 「ケイゾク」 TBS系 独特のテンポで“不思議感”を出し、謎解きの場面では、決して力まず、親しみやすささえ漂う演技を見せて、これまでの刑事像をすっかり覆した。その表現力と想像力には読者からも感嘆の声が多数届いたほど。
助演男優賞・女優賞
渡部篤郎 「ケイゾク」 TBS系 妹を犯した犯人への怒りと刑事としての理性のはざまで苦悩する真山をアクセントの効いた演技で表現した。対照的なキャラクターの柴田(中谷美紀)とのコンビネーションもピタリ。
石田ゆり子 「オーバー・タイム」 フジ系 引きずっていた不倫関係を断ち切り、年下のカメラマン・遠藤(加藤晴彦)に恋をするようになる冬美役。夏樹(江角マキコ)と対照的に要領がよく、どちらかといえば小僧らしい冬美を嫌みなく、かわいらしく演じたことに評価が集まった。主演を含めて今回が初の個人賞受賞となる。
主題歌賞
「朝がまた来る」:DREAMS COME TRUE 「救命病棟24時」 フジ系 アコースティック・サウンドで聴かせるミディアム・ナンバーで、ドリカムにとって久々のリリースとなったシングル。せつない歌詞や曲調は、主人公の進藤(江口洋介)や楓(松嶋菜々子)の胸の内を代わりに伝えているようで心に響いた。
■第21回( )
最優秀作品賞
「魔女の条件」 TBS系 平凡な人生に嫌けが差していた高校教師・未知(松嶋菜々子)と、母親(黒木瞳)の溺愛から逃れたい生徒・光(滝沢秀明)が禁断の恋に落ちる。子供を流産し生死をさまよう未知に、光が永遠の愛を誓うラストは感動的。高校教師と生徒が周囲の反対を乗り越え真の愛を求める姿は、ドラマの枠を飛び越え社会的話題に。
主演男優賞
渡部篤郎 「ラビリンス」 日本テレビ系 姉の死の謎を追う医師・悠一郎の揺れ動く感情を切れ味鋭く、そしてかっこよく表現した。視聴者を作品世界に引き込んでいく力量は相変わらず。存在感も圧倒的で、いわゆる脂がのってきている観がありありと。
主演女優賞
永作博美 「週末婚」 TBS系 冷たいしうちに耐える姿もさることながら、むしろ“女性のズルさ”の部分により神経を配って人間味を強調。それによって実在感をぐんと与えて視聴者を引きつけた。演技派として底の深さを見せた。
助演男優賞・女優賞
石井正則 「古畑任三郎」 フジ系 連ドラ初挑戦ながら、すでに完成された古畑ワールドに溶け込み、作品の新たな魅力を引き出したのは立派。お笑いコンビ・アリtoキリギリスのひとりとしての活躍だけでなく、俳優としての今後の活躍も期待される作品となった。
松下由樹 「週末婚」 TBS系 妹・月子(永作博美)に対して優越感をもつことで精神的なバランスをとっている陽子役。いつものことながら細部まで気の行き届いた演技で、妹イジメに走ってしまう陽子の心の背景をていねいに表した。
主題歌賞
「First Love」:宇多田ヒカル 「魔女の条件」 TBS系 この年彗星のように現れた彼女が600万枚超をセールス(当時)したアルバム「First Love」からシングルカットしたスローバラード。彼女の震えるようなハスキーボイスが美しいメロディーに乗って感動的なシーンをさらに盛り上げた。
■第22回( )
最優秀作品賞
「彼女たちの時代」 フジ系 平凡な3人のOL(深津絵里、水野美紀、中山忍)が漠然とした不安に心を揺らす日々と、リストラ候補にされてしまった男(椎名桔平)が絶望や葛藤と戦いもがく姿を描いた。どこにでもありそうなエピソードやシチュエーションの中で、登場人物の心の動きをていねいに描写して質の高い作品に仕上げた。
主演男優賞
堂本剛 「to Heart 恋して死にたい」 TBS系 ハングリー精神旺盛だがナイーブなボクサー・ユウジは彼の得意とする役どころ。透子(深田恭子)との恋の場面でもその魅力が顕著に現われた。また表現力豊かな目の演技など着実なステップアップも実感。。
主演女優賞
深津絵里 「彼女たちの時代」 フジ系 映画、舞台で演技力は確実に向上、今回の“普通のOL”深美役でもその巧者ぶりは随所にちりばめられていた。何気ない場面をさりげなく、しかしわかりやすく演じられるところはみごとというほかなし。
助演男優賞・女優賞
椎名桔平 「彼女たちの時代」 フジ系 出向先で上司(平泉成)にしごかれても前向きに立ち向かおうとする姿など、会社の仕打ちに耐える痛々しさは目を背けたくなるほどのリアルさ。女性にファンが集中しがちな作品に男性ファンを取り込んだ功績は大きい。
深田恭子 「to Heart 恋して死にたい」 TBS系 喜んだり悲しんだり、悩んだり笑ったり、そのひとつひとつの表情やしぐさやセリフがすべて全力で、汚れのないかわいらしさがあった。「透子を思わず応援したくなった」という読者の声が女性からも多数あったのも納得。
主題歌賞
「なぜ…」:Hysteric Blue 「P.S.元気です、俊平」 TBS系 サビの歌詞とメロディーが印象的なナンバー。アップテンポながらもどこかせつない曲調は、俊平と桃子の心がすれ違ってしまいそうになるシーンなどで特に効果的で、2人の危うく、そして純情な恋をよりドラマチックに盛り上げた。
■第23回( )
最優秀作品賞
「危険な関係」 フジ系 タクシー運転手の新児(豊川悦司)は、自分が殺したつもりの人物になりすましてスーパーの社長に就任。そのスーパーの不正を追っていた刑事の有季子(藤原紀香)は、深い謎を秘めた彼に徐々にひかれていく。新児の壮大な嘘がいつ破綻するのか、先の読めない展開から最後まで目が離せなかった。
主演男優賞
豊川悦司 「危険な関係」 フジ系 壮大な嘘を貫こうとする新児の無気味な威圧感、一転、タクシー運転手でいるときの穏やかさ。対極ながらいずれもリアリティー十分で、彼の“存在感”が作品の世界観をつくったといっても過言でない魅力を見せた。
主演女優賞
松嶋菜々子 「氷の世界」 フジ系 クールでミステリアスな塔子役で新境地に挑んだ。謎に包まれ氷のような冷たさをたたえた前半と、宿命の愛に身を焦がす後半の火のような女っぷり、2つの対照的な演技に役者として確実に成長していることが見てとれた。
助演男優賞・女優賞
大沢たかお 「美しい人」 TBS系 これまでどちらかといえば優しい役が多かった彼の、新たなハマリ役を発見できたのは大きな収穫。獰猛で恐ろしい次郎に思わずひかれる女心が、男性が見ても納得できるほど、文句なくカッコよくセクシーだった。
常盤貴子 「美しい人」 TBS系 第1話では表情が全く映されない中、後ろ姿などでみゆきの恐怖をみごとに表現。また、恋する女性の、内面からにじみ出るような“華”のある演技は彼女の真骨頂。
主題歌賞
「無造作紳士」:ジェーン・バーキン 「美しい人」 TBS系 どこか懐かしくせつないメロディーとフランス語の美しい語感が、ドラマの“美しい”世界観にみごとにマッチした。海外の楽曲の受賞は第7回「未成年」(’95年 TBS系)のカーペンターズ「TOP OF THE WORLD」以来の快挙。